淡白な四角かった爪。
力を込めたら変形する様な程よい硬度の中で溶けない左手。
非常ベルは肩車でもしない限り届かないから瞼を閉じて入り口の壁に同化する。
回転し続ける天井から放たれる淫らな人影。
気配だけが通り過ぎてゆく錯覚と残像と性。
塗りたての爪先が時折匂って仰ぎ見る模倣。
大抵の隣人は肩甲骨まで伸びた髪を帽子に納めていて古臭い毛糸が心許ない一色から引き剥してくれる。
顔面積の半分を占める眼鏡や丸く整えられた後頭部で中間層は遮られるけれど、
床は案外と透けて居て大抵の靴底は厚く無いのに下半身がお座なりになっている。
黙視して寄り添う焼き鳥屋の学生達さながらに。
利き腕
利き目
心の臓
彷徨うことを怠らない。

